『三咲町』
GSギルドの第2特殊資料室で、煩悩の神とまで呼ばれた人間は天変地異でも起きそうなくらい真面目に資料を漁っていた。
「わからないな。なんで、俺はアルトルージュ・ブリュンスタッドに呼ばれていたんだ?」
横島は一人呟く。そう、アルトルージュ・ブリュンスタッドとは会ったこともある。話したこともあるのだ。
それが必然であろうと、偶然であろうと、何らかの理由があるはずなのだ。
時間移動は文殊の力ならば可能なはずだが、特定の時間、特定の場所を指定するには横島の力はまだまだ足りない。
アルトルージュに導かれたという可能性もあるが、本来、横島とアルトルージュには何のつながりも無い。
アルトルージュに呼ばれる理由など無いのだ。
それでも、時間を操ることの出来る死徒でもいるのではないかと調べているのだが、成果は上がっていない。
そもそも存在しないのか、ただ単に資料が無いのか。どちらともいえない。
「…一体どういうことなんだ。そもそも死徒って一体なんだ?」
才能と努力により、戦闘能力は一流なのだが、知識がからきしの横島は根本的に全て理解していなかった。
なので、疑問を解消するために、横島は仕事を休んでGSギルドに篭っている必要がある。
無論、所長が欠勤しているという事態に、横島除霊事務所は非常に困っていた。
雪之丞達の独自の裁量で小さな依頼ならこなしているが、大きなものは断らざるをえないのだ。
半ば開店休業と化した事務所に、今日は弓という客が来ていた。
いつもなら雪之丞は気恥ずかしさから良い顔をしないのだが、今は横島の不審な行動に歯がゆい思いをしていたので、気分転換のために招き入れたのだ。
「今日も横島は休みなの?」
弓は率直に雪之丞に聞いた。
「ああ。……林間学校以来、あいつは何かに悩んでいるみたいなんだが……」
雪之丞は苦りきった表情で首を振った。
「すみません、横島さんがどこにいるかすら僕たちは分からないんです」
ピートも弱弱しく言った。
「横島さんのことですケン。またどこかで厄介ごとに巻き込まれているんですかノー」
タイガーの予測に、雪之丞たちはありえそうだと頷く。
もっとも、弓は横島の不幸気質から頷いたのに対し、男たち三人は横島の優しさから困っている者を助けているのだろうと、
捕らえ方に天と地ほどの差があったが。
そんな高評価など露とも知らず、横島は一人、電車で遠出していた。
結局、GSギルドの資料では結論を出せなかったので、誰か吸血種に詳しいものに聞くことにしたのだ。
部下にして、仲間にして、友である、ピートというバンパイア=ハーフがいたが、詮索されたくなかったために別の者にした。
林間学校のときに戦った相手はおそらく死徒二十七祖。魔神クラスの敵では命の保障は無い。
そんな化け物と戦おうとしていると知ったら、お人好しの仲間達は命がけで助けてくれるだろう。それは避けたい。
誰よりもお人好しな横島は、もう二度と大切な者を失いたくないのだ。
そのため、横島は自分達とは何の関わりも無く、吸血種に詳しい者を探した。
AランクGSの権限を持ってすれば、簡単に見つかった。
金持ちとして有名な遠野グループというものがあるのだが、その遠野は実は半妖の一族で、日本の妖魔たちの中心的存在らしい。
彼等なら吸血種の詳しい話も知っているはずだ。
そんなこんなで向かうは遠野家総帥の自宅がある三咲町。
しばらく電車に揺られて、三咲町に到着した瞬間、横島は顔をしかめた。
「まったく……この場所は一体何なんだ」
一般人では気付かない程度の妖気が町全体を覆っているのだ。
霊能力者として一流の横島は鋭すぎる感知能力が仇となって不快感を催してしまう。
そして、夜間に来たものだから……とは言ってもまだ十時過ぎなのだが、人通りがほとんど無い。
いや、無さ過ぎる。
思わず横島がポケットにある文殊を握り締めてしまうくらいに怪しいところだった。
横島の恐怖のボルテージはだんだんと上がっていく。
とはいえ横島は腐ってもゴーストスイーパー。不可思議なことに対処するのがお仕事である。
妖気は無視して、遠野家の用事だけ済まして帰る。などということが横島に出来るはずも無い。
横島はため息をついて、霊力を全開にする。多少の霊波でも感知できるように……。
それが、一発で命中する。強力な霊力が工場の町方面を移動しているのがわかった。
その正体がなんなのか分からないが、やるしかなかった。
「工場街か」
横島は疾走した。少々遠いが丁稚時代に異様なほど鍛え上げられた体力を持ってすれば容易であった。
なんで、私があんな化け物に追われなければならないの?
なんで、あんなのと出会っちゃったの?
ピンチだよ。助けて
「……あれ、おかしいな」
横島は周りを見渡した。強い霊力に向かって走ってきたのだが、どう見ても誰もいない変哲の無い路地裏である。
「間違えたかな?」
横島は強い幽霊でも感じてしまったかな。と、思った。その時、足音が聞こえる。
横島は耳をそばだて、足音を聞いた。
「この音は足音?」
横島も最近真面目に生きすぎていたので、久々に煩悩パワーが全開になっていた。
「年齢は十六歳から十八歳の間。女の子の足音だ!!」
何故、分かる!? そんな突っ込みが入りそうだが、横島だから……。説明はそれだけで十分であろう。
横島は脚力の限界を目指して爆走した。熱い男はマッハを超える。
ちなみに時速としては三十八キロ、この時彼は世界新記録を打ち立てた。
彼はそんなことは構うはずも無い。横島の前には煩悩?
否!! 愛しかないのだ。横島はぶっちゃけ、BOYS BE を狙おうとしていた。
そして……当たった。
「きゃあ!!」
曲がり角でぶつかり、少女が倒れた。
さっそくお約束として口説こうとしたが、少女の後ろから顔から手の先まで、全身に包帯を巻きつけた男が現れたため止まった。
横島はその包帯男を見た瞬間にGSとしての勘が働いた。
「ほう……二人もかかるとは、今日は幸運だな」
「なっ……」
この怪しすぎる男からは霊気が流れてきている。
「下がっていろ!!」
横島はその少女を後ろに庇うと、身構える。
手からは瞬間的にサイキック・ソーサーが出されていた。
「むっ……まさか、退魔の一族か?」
横島は何が来てもいいように警戒した。何か得体の知れない嫌な予感がするのだ。
まずは、相手の手管を見極めるしかない。
「貴様は何者だ?」
横島は文殊の使用も考えつつ、少しでも相手のことを知ろうと問いかける。
包帯男はこの問いに鼻で笑って返した。
「今から死ぬお前に話してもどうしようもないな」
「なんだと……?」
横島が聞くと同時に包帯男は高く跳んだ。
数メートルも飛び上がった男を見て、横島は相手が人間ではないことを確信する。
いや、雪之丞なんかはこれくらい跳ぶが、そういうのは例外である。
ともあれ、妖魔の類ならかなり無茶をしても大丈夫なので、横島は身動きが出来ないくらいにダメージを入れることにした。
「伸びろ! ハンズ・オブ・グローリー!!」
横島の叫びに応じて、霊波刀が楔のごとく伸びていき、包帯男に襲い掛かる。
「くっ……、おのれ!」
空中に居るため避けることはまず不可能。だったのだが、なんと包帯男は建物の外壁を蹴って避けきった。
「うわ!! なんじゃそりゃ!? 人間か!? ……あ、妖怪か」
驚きのあまり一人ボケ突込みをする横島に、守られている少女は得も知れぬ不安を感じたが彼が気付くはずも無かった。
「ふん。妖怪などという下等生物と同列に扱うな。俺は不老不死を手に入れた吸血種だぞ」
包帯男は優越に満ちた笑みを浮かべながら言った。
先程の横島の攻撃で、手強いと思いつつも自分のほうが上だと確信しているようだ。
傲慢な物言いだが、横島は気にならなかった。
ちなみに近くに高慢な人間がいたため慣れていたことは関係ありません。ありませんとも。
横島はそんなことよりも、包帯男の発した一言が気になっていたのだ。
「……吸血、種?」
「貴様も退魔を生業とするなら聞いたことがあるだろう?」
もちろん聞いたことがあった。
というか、ある意味、目的の存在である。
「えーと、おい! 彼女知ってるか? 彼女。えーと、アルトルージュ・ブリュンスタッド。金髪の絶世の美女!」
戦闘中にもかかわらず、横島は問いかけた。ああいう女性とは過去ではなく現実でお近づきになりたいものだ。
それに時間移動のことを彼女に聞いておきたいし。
ちなみに前者と後者、どちらが優先されているかは本人しかあずかり知らぬところである。
「ブ、ブリュン……スタッド……だと?」
聞いたことがあったのか、包帯男は信じられないものを聞いたとばかりに呆然とした。
そして、
「え?」
横島は本能的に身構えた。
「貴様……」
横島の背筋に冷たいものが走り、冷や汗が噴出してくる。
「……真祖の、姫を、知っているのか?」
包帯男の静かな問いかけに、横島は返すことが出来なかった。震えが止まらない。
「真祖の姫を知っているのかと、聞いている」
包帯男の感情の無い静かなもの言いの奥に、熱くたぎる激情を感じ取って、横島は自分が震えているわけを悟った。
恐怖だ。
圧倒的なる恐怖。
包帯男の発する殺意が、横島の体に絡みつくのだ。
殺意など妖魔たちにいつも浴びせかけられているのだが、彼らはもっと動物的な殺気を放ってくる。
目の前の男は、研ぎ澄まされた、まるで暗殺者のような殺気なのだ。
そんなものを体験したことの無い横島はすくみあがってしまう。
「う……あ……」
だが、包帯男はすぐに殺気を抑えてしまった。
「え?」
「ちっ……。時間切れか」
ふと、空を見上げれば、東の空が明るくなり始めている。
朝だ。
「また会おう。人間」
その言葉に視線を戻してみれば、一目散に逃げていく包帯男が見えた。吸血種だと言っていたから太陽の光は天敵なのだろう。
「助かった、か」
横島は安堵の吐息を出す。
振り向くと、先程の少女が唖然として見上げていた。
「さて、大丈夫か?」
「あ…はい。大丈夫です。」
「どうやら、この辺り危ないらしい。歩いてたらいけないみたいだから……」
すでに前の煩悩はすべて消えていた。それよりも、プロとして先ほどの敵のほうが気になった。
「そこまで送ろう、あいつがどこに潜んでいるかもしれないから」
横島は言うと少女と歩き始めた。
「……GS。あっ、思い出した。その顔……確か、魔族に協力しているってテレビでワイドショーを組まれていた……」
「いや、それはスパイで潜入していただけなんだけど」
横島は苦笑した。その話題から知られているとは思わなかったのだ。あの事件は横島の人生も大きく狂わせていた。
その魔神大戦の影響がこんなところまで出ていた。
「この交差点まで送ればいいな。俺の名前は横島忠夫だ」
「私は弓塚さつきと言います」
「じゃあ、またどこかで会えたら」
横島は言うと歩き出した。
しばらくして、少女が完全に見えなくなり、あたりの人気が完全に無いことを確認して足を止めた。
「おい、さっきから俺を見ている奴……いるんだろう!!」
「流石ですね、魔神大戦の英雄は伊達じゃないと言うところですか」
横島は振り返った。そこには電灯の上に立つ黒い法着の女が立っていた。
「お前は……」
「GS試験でもお会いしましたね」
横島は思い出す。いきなり剣をぶん投げてきた危ない女だ。
確か、唐巣神父は埋葬部隊のシエル嬢だとか言っていたか。
せめて目的くらいは聞き出しておかないと命に関わる。慎重に色々と聞き出さなければならない。
まずは軽い挨拶から。
「ずっと前から愛してましたーーーぁっっ!!」
垂直6メートル? ナナメだから実質10メートル? そんなものは障害になりえない。横島はどういう体の構造をしているのか電信柱の上まで飛び上がった。
かかと落とし。
「ごぶっ!!」
墜落。
びちゃり。
「…………」
シエルは自分でやったとはいえ、地面に飛び散った赤いモノを見て、やりすぎたと後悔した。
横島も横島で少し後悔していた。横島でなかったら即死しているようなダメージである。
ちょっと性急すぎたと後悔していた。まだモーションかける気でいるあたり漢である。
「ぐううううううう。死ぬかと思った」
「……生きてたんですか!?」
殺す気だったのか? とは聞かぬが花。
横島は落ち着いて、こんどは聞くべき事を聞く。
「お嬢さーーーーん! ぜひ、住所と電話番号を!!」
「異様に高い身体能力と再生速度。吸血種の特性のようですが、違う。
血を吸った形跡は無く、太陽の下と月の下での能力の変動も無い。あなたは何者ですか?」
「うわ、無視された! ま、いいか。俺は横島忠夫。あえていうなら、そう、愛の伝道師さ!!」
キラーン、と歯を光らせて、うそ臭いほど爽やかな笑みを浮かべる。
「……答える気はありませんか。それはそれで構いません。ただ、この町を早く離れることですね。命が惜しければ」
シエルは言うと、身を翻す。
「って、待った。そっちこそ何者だ?」
まだ、目的も何も聞き出していないというのに、彼女は去っていってしまった。
「おれ……変なことに関わっちゃったみたいだな」
横島は思わず呟いた。それは、アルトルージュと話した時から感じたことだが……。
一眠りした後、
『おい、横島。てめえ、一体どこにいやがる!!』
雪之丞の声が携帯電話の中から聞こえた。
「ああ、ホテル……三咲町のホテルだ」
『こっちは忙しいのに、何を遊んでやがる。さっさと戻って来い』
「それができそうに無い。強力な霊気が町中から感じるんだ。その原因を突き止めるまでは帰るつもりは無いぜ」
横島は宣言した。
『てめえ……そう言うのは四週間も休んでいる奴が言うことじゃねえ!!』
「まあ、雪之丞たちで何とかしてくれ。まあ、できればこっちに援軍も欲しいところだけどな」
『誰がやれるか!!』
雪之丞の怒声に横島は笑った。
「ははは、大丈夫だって。弓さんたちと喧嘩しないでやってくれ」
横島は電話を切った。
「さて……活動再開だ」
遠野家にアポでも取って、さっさと用事を済ませてしまうほうがいいとは思うのだが、昨夜の吸血鬼を何とかしないと寝覚めが悪い。
横島は町を歩き始めた。特に問題は見当たらない。
いや、問題はある。周りの人間の考えを文殊で『覗』いていた。その結果、全員がストレスで疲れていた。
吸血鬼事件の影響であろう。よく見れば顔色が良い人間が一人もいない。
その時、横島は立ち止まった。
前方から来る金髪の女性を見たのだ。赤い瞳、整った顔立ち。見覚えがあった。
「まさか……」
横島は女性を凝視する。彼女は横島を無視して通り過ぎようとしたがある名前を出したとたん、止まった。
「アルトルージュ・ブリュンスタッド?」
横島は呟いた。
「……何者よ。あなた」
彼女は振り向くと不機嫌そうに呟いた。横島はまがまがしい妖気に距離をとる。
「……違うのか? ……何者だ。そんなまがまがしい気配、人間にはできないぜ」
「そうね、あなたも厳密に言えば人間じゃないみたいだけど」
彼女は横島から目を離さない。横島はため息をついた。
「しゃあねえな。とりあえず、そこの公園に入ろう。戦うにしても話すにしてもこの場所は悪すぎる」
「……確かにそうね。人間は余り巻き込みたくは無いから」
横島たちは公園へと入っていった。平日の午後ともあって、公園には人影が見えない。
「なんで、あんたがアルトルージュのことを知っているのかしら?」
「んー、ちょっと長くなるけど、いいか?」
相手が頷くのを見て、夢の説明を始める。念のため切り札である文殊のことは省いたが、それ以外は全て話した。
「ふうん。信じられない話だけど、とりあえず信じておくわ」
「それで、そっちは?」
「私はアルクェイド・ブリュンスタッド」
「……ブリュンスタッド?」
「ええ、アルトルージュは、そうね、いちおう私の姉になるのかな」
すこし引っかかる物言いだが、頷けるものがある。
アルトルージュを大きくしたら、丁度目の前の女性とそっくりになるであろうことが予想できるくらいに似ているからだ。
「私がこの町に来た目的は、吸血鬼退治」
「へ?」
吸血鬼退治? だって、アルトルージュの妹だって言うのなら、彼女も吸血鬼のはずだ。
同族殺しなんて人間では珍しいことでもないが、仲間意識の強い妖魔たちではあまり無いはずなのだ。
「吸血鬼にも色々あるのよ。この町にいる吸血鬼にはちょっと因縁があってね……」
「ふーん。あ、そういえば昨日、というより今日の朝か。ブリュンスタッドの名前に反応した吸血鬼がいたな」
横島は包帯男を思い出す。今思えば、アルトルージュの名ではなく、ブリュンスタッドに反応していた。
「アルクェイドって、もしかして真祖の姫とか呼ばれてる?」
うわ、もう殺気は勘弁してください。本日二度目の強烈な殺気に当てられて、ちょっとうんざり気味に震え上がる。
「あなた……アイツに、会ったの?」
「ちょっと戦って、逃げられた」
「そう」
殺気が治まる。
横島は深呼吸して高まった動悸を無理やり抑えると、質問する。
「なあ、そいつのことなんか知ってるんなら教えてくれないか?」
「……あなた、戦うつもりなの?」
アルクェイドは何故か呆れているような顔で聞いてくる。
「もちろん」
横島は即答する。あまり戦うことは好きではないのだが、世界を救う英雄の道を選んだのだから、逃げることは出来ない。
「……死徒二十七祖の番外。アカシャの蛇。ミハイル=ロア=バルダムヨォン。
無限転生者。はっきり言って人間にどうこうできる相手じゃないわ」
二十七祖っていえば、アルトルージュとかズェピア並のやつってことか。包帯男はそこまで強いとは思わなかったが……。
「まあ、あなたは人間じゃないみたいだけどね」
「……なんですと?」
人間離れしているとは言われたことはあるが、人間じゃないとまで言われたのは初めてだ。
「今度はこちらから質問して良い?」
横島は頷いた。
「あなたは魔族、それとも人間?」
その質問に、横島はやっと得心がいった。確かに横島の霊気構造には魔族のものが混じっているのだ。
「言うならば……人間から死徒になった者もいるように、俺は人間から魔族へなりかけているんだ。まあ、言うならば魔人だな」
「そう、まあそれ以上は聞かないわ。聞いたら、私とも戦いそうだし……それに、今は余計な怪我をしたくないの。
あなたと戦ったら、私も間違いなくただじゃすまないわ。勝てるとは思うけど、奴と戦う前に怪我したくないもの」
横島はアルクェイドの言葉に少し考え、提案を出した。
「……なあ、同盟を結ばないか。死徒は俺にとっても敵でしかない。ならば、敵の敵は味方と言うことでな」
横島はアルクェイドに利害関係から同盟を持ちかけることにした。戦っても勝ち目がなさそうだったからだ。
「面白いけど……まあ、協力関係ということかしら」
「まあ、そんなところだな」
横島は頷いた。いざとなったら文殊やAランクGSの権限を使って、色々特典を付けてでも仲間にしようと考えていたのだが……、
「分かった。うん、それでいい」
あっさりとした返答に、横島はずっこけた。もう少し押し問答が必要かなと思っていたのだ。
「俺の名前は横島忠夫だ。GSをしている」
「私はアルクェイド=ブリュンスタッド。よろしくね、横島」
アルクェイドは言った。それから、少し打ち合わせした後、横島とアルクェイドは別れた。
横島は吸血鬼に対抗するために装備を取りに、アルクェイドは吸血鬼を探しにである。
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